知的財産法の観点からみるアジア諸国へのブランド戦略の悩み(つづき)

Posted on Posted in Asia, entertainment

前回は、中国における抜け駆け商標登録問題の背景について綴ってみましたが(http://logbooks.jp/?p=337
今回は、日本企業がこの悩ましい問題にどのように対処していくべきかについて、先日判決が出された双葉社の「クレヨンしんちゃん」のケースを参考にしながら、法的な観点から解決策を考えてみました。

☞ 早く商標出願
まずは、早期に商標出願して商標を登録することが有効であることは言うまでもないですね(前回説明した先願主義)。

いち早く中国で自社のロゴ等の商標出願をしてしまえば、中国国内(他の国においては別途出願が必要!)において、その商標を使用し、また、他社に使用させないことができます。
*マドリッド協定議定書により、一度の手続で複数の国において商標の保護を受けることもできます。(http://www.jpo.go.jp/seido/s_shouhyou/mado.htm

少なくとも、台湾や香港へ進出した後に、中国への進出を検討しているのであれば、中国での商標出願も同時に行ってしまった方がよいでしょう。

もっとも、自社ブランドや商品を海外で展開する具体的な予定がないにも関わらず、海外で商標登録することは現実的ではありません。

また、中国の場合、日本企業が中国において商標登録はしたものの、3年間中国に進出せず、その商標を使用していない場合には、その不使用を根拠に登録した商標が取り消されてしまう可能性があります(中国商標法44条4号)。

☞ 異議申立
中国において、中国企業に抜け駆け的な商標登録がなされてしまった場合、その商標が公告された後3ヶ月以内であれば、中国商標局に対して、商標登録の要件を満たしていないこと(地名商標などに限られます。中国商標法10条)を理由に異議申立をすることができます(中国商標法30条)。

もっとも、日本企業としても、常に中国国内のあらゆる企業が商標登録していないかを監視し続けることは手間もかかり、効率的ではありません。
*インターネットで中国における商標登録を検索することは可能です(http://www.pref.gunma.jp/contents/000033038.pdf)。

☞ 取消裁定の請求
そこで、一つ有効な手段は、商標評審委員会に対する登録商標の取消裁定を請求することかと思われます(中国商標法41条)。

この取消裁定の請求であれば、原則として商標登録後5年間の間であれば行うことができます。

「クレヨンしんちゃん」の事件では、双葉社が中国企業の商標登録の取消裁定を求めたのに対し、中国商標局商標評審委員会(TRAB)は、(紆余曲折ありましたが、最終的に)問題となっているクレヨンしんちゃんの商標(「蜡笔小新」(「クレヨンしんちゃん」の中国名)の文字及び図形(しんちゃんのキャラクターの絵))について、「不正手段によって取得された商標」は取り消す、という判断をしました。

これに対して、当該中国企業は、TRABの評決を不服として行政訴訟を提起しましたが、中国の裁判所も、
「中国企業の先駆商標登録は、不正利益を得るための行為であり、かかる行為は誠実信用の原則に反して双葉社の特定権益を侵害した上、中国の商標登録管理の秩序及び公共の秩序をも乱し、多大な行政審理資源及び司法資源を浪費し、公共の利益に損失を与えた」
という判断を下し、抜け駆け的な商標登録に対する警鐘を鳴らしました。

つまり、不正利益を得るための抜け駆け商標登録は許しませんよ、ということです。

・・・

これで、抜け駆け商標登録の問題は解決。

なんてことはありませんね。。

自社のブランド名などを勝手に使われた日本企業にとっては、商標登録の取消が実現しただけでは、自社が被った損害(中国における事業展開の遅れによる損害、商標登録の取消に要する費用等)は填補されません。

では、日本企業としては、抜け駆け的商標登録を行った中国企業に対して、自社のブランドが有している著作権が侵害されたことを根拠として、その商標の使用停止と損害賠償を求めて裁判所に訴えを提起できないのでしょうか。

つづく・・

参考:
■中国商標法
http://www006.upp.so-net.ne.jp/TTS/link3.11.12.htm
■中国における商標検索
http://www.pref.gunma.jp/contents/000033038.pdf

コメントを残す