“違法ダウンロードが罰則化で懲役2年!”について考える

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「違法ダウンロードが罰則化 改正著作権法が本日施行」

このようなニュースや記事が多く見受けられるとおり、本日から、いわゆる違法ダウンロードが刑罰の対象となり、「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金(または両方)」に処せられることになりました。

インターネットを用いて音楽や映像などを個人的に楽しむ目的でダウンロードすることは、多くの方が日常的に行っている行為です。ですが、その音楽や映像などが違法にアップロードにされたものかどうかなど気にしない方が多いでしょう。急に「違法ダウンロードは罰する」と言われて戸惑う方も多いかと思います。

☞ そもそも何をすると罰せられるようになったのか

今回改正された著作権法119条3項によると、
「私的使用の目的をもって、有償著作物等の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害する行為」
が処罰の対象になります。

???
と思う方も多いはずですので、ざっくりとした言い方をしますと、
①他人の著作権を侵害する態様で違法にアップロードされた音楽や映像などを、
②違法にアップロードされたものと知りながら
③ダウンロードする行為
は、たとえ私的使用の目的であっても、違法で、しかも刑罰の対象となりますよ、
ということです。

典型的な場面としては、動画サイトなどに投稿される海賊版の音楽や映画などを、違法なものと知りながらダウンロードすることなどが挙げられます。

「なるほど!」と思いながらも、まだまだ疑問が湧いてくる方も多いかと思います。

☞ こんな場合はどうなる?
典型的な場面を少し並べてみました。

Q. ネットで見つけたテレビ番組をダウンロードしたらダメ(刑罰の対象)なのか?

A. 大丈夫です。条文の中に「有償著作物」とあります。地上波のテレビ番組は無償なので、「有償著作物」にあたらないからです。

Q. それでは、静止画のダウンロードは?

A. これも大丈夫です。禁止されている「録画」とは動画をコピーすることをいいますので、静止画は刑罰の対象にはなりません。

Q. それなら、Youtubeやニコニコ動画のストリーミングは?

A. 必ずしも明確でないかと思いますが、大丈夫と思われます。ストリーミングというのは、一時的にデータが保存されるだけですので、条文でいう「録音」や「録画」にあたらないと考えられるからです。
しかも、この行為を取り締まったら、世の中犯罪者ばかりになってしまいますね。。

***

以上で見たとおり、グレーに感じる事例が多く(上で掲げたQAはほんの一例にすぎません)、このような規制には問題がある、と思う方は多いでしょう。

ですが、問題は他にも山ほどあるのです。

たとえば、先ほどの「グレーに感じる」という視点の延長線で考えた場合でも、
「『違法にアップロードされたものと知りながら』(原文は『自らその事実を知りながら』)とあるけれど、ネット上にあるその映像が『違法にアップロードされたもの』かどうかなんて、よく分からない。どうすればいいんだ!?」
という声も多く聞こえてきます。

つまり、著作物である映像等のコンテンツが違法アップロードされたかどうかの判断をユーザーに強いることになる、ということです。

現実の運用としては、違法にアップロードされたコンテンツと強く疑われる状況の場合には、「違法にアップロードされたものと知っていた」と認定されやすいでしょう。

それ以外にも、
「処罰範囲が広すぎる」(先ほどは「大丈夫」な例ばかりを挙げましたが。。)
「警察によって恣意的に運用されるんじゃないか」
などといった数々の問題が指摘されています。

☞ 改正の背景は?

このように、批判や問題点が多い今回の改正ですが、そもそもこの背景にはどのようなものがあったのでしょうか。

日本における違法ファイル等の年間ダウンロード数は、推定で43.6億ファイル(正規有料音楽配信の10倍)、正規音楽配信の販売価格に換算すると6683億円と言われています(日本レコード協会調べ。ただし、この推定値の正確性について議論はあります)。
そして、依然として、違法な音楽等の流通量は減少せず、コンテンツ産業に大きな被害があったため、これを食い止める必要があったことが背景だと言われています。

そして、今回の刑罰化に賛成する人たちの意見としては、
「コンテンツを流通させるネットビジネスを発展される環境を作るためには、市場を公正なものに、価値あるものにはお金を払わなければならない。」
「違法アップロードへの刑事罰のみでは違法サイトへの削除要請の手間や海外サイトへの対応が難しい。」
「違法ダウンロードは、リアルの店の万引きと同じ。」
だから、違法ダウンロードの刑罰化もやむを得ない、などというものが挙げられています。

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ところで、
最近世界でヒットしているアーティストの収入を考えると、CDの収益はわずかで、多くはライブ収入という話を聞きました。
日本でもフジロックの盛況ぶりと、一般的なCD売上を比較すれば、そのことも想像できそうです。
そのようなアーティストにとっては、無料でも多くの人たちに音楽や映像を提供したほうが彼らのビジネス的に良いのであって、ダウンロードなどを厳しくすればするほど、かえってアーティストの首を絞める事になります。
そうすると、この法改正によって得をするのは誰になるのでしょうか・・。考えてみて下さい。

他方で、通信技術の高速化に伴って、今後ストリーミングが増える事になれば、もはやダウンロードをする必要すらなくなっていくかもしれません。
そして、ダウンロードが違法になればなるほど、違法なストリーミング用のコンテンツが増える事になり、そうなれば、この法律は、すぐに時代遅れという事になってしまいます。
そうすると、次はストリーミングを罰則付きで取り締まることになるのでしょうか・・

このような数々の悩みを抱えた今回の改正著作権法ですが、これが施行されたからには、今後どのような運用がなされ、誰にどのような影響が及ぶのか、まずはその現実に注目することが今後の議論を進展させる第一歩なのだと思います。

参考
文化庁HP
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/21_houkaisei.html
ITメディアニュース
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1206/19/news089.html

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