メジャーリーグ挑戦とプロ野球の「田澤ルール」

Posted on Posted in sports

「入学当初からの夢だった。若いうちに行きたい思いがあった。」
「日本のプロにも憧れはあったが、メジャーへの憧れの方が強かった」

花巻東高校3年の大谷翔平選手が、メジャーリーグ挑戦を表明しました。
大谷選手、投手としてアマチュア最速の160km/hを記録し、野手としても国際大会でU18日本代表の4番バッターを務め、プロのスカウトからも高く評価されています。
僕も学生時代野球をしていたのですが、次元が違いすぎてどれだけスゴイのかさえもわからないです笑。
さて、今日は、メジャー挑戦とプロ野球の「田澤ルール」との関係について考えてみたいと思います。

■「田澤ルール」とは?
「田澤ルール」とは、プロ野球12球団で構成される日本プロ野球機構(以下「NPB」といいます)のルールで、日本のドラフト指名、入団を拒否し海外球団と契約した選手が、海外球団退団後、2年間(高卒の場合は3年間)NPBに復帰することを認めないという12球団の合意です。
ごくラフにいうと、「アメリカに行くなら、日本に戻ってきてもしばらく仲間にいれないよ」というものですね。

2008年、当時新日本石油に所属し、ドラフト指名候補であった田澤純一選手が、
NPBを経ず、メジャーリーグ・ボストンレッドソックスと契約したことを契機に、
将来を嘱望される選手の海外流出を防ぐ目的で、導入されたようです。

このルールが適用されると、大谷選手はメジャーリーグの球団を退団してから3年間は、
日本のプロ野球選手になることを希望し、また日本の球団が獲得を希望する場合であっても、
NPBでプレーすることはできません。
このルールは禁止期間がドラフトを拒否してから3年間ではなく、
海外球団を退団してから3年間というのが一つのポイントと思います。

また今のドラフトのルールを前提とすると、海外球団退団から3年後、
12球団から再度ドラフト指名(2007年の多田野選手のようにNPBの「新人選手選択会議規約」上「新人選手」として扱われます)
されてはじめてNPBでプレーすることができる、ということになります。

■「田澤ルール」で優秀選手の海外流出を防げる?
この「田澤ルール」が選手の意思決定に影響を与えて、海外への挑戦を翻意させるとは思えません。
全く異なる生活環境、言語、カルチャーに身を置いてメジャーに行くこと自体、大きな覚悟が必要です。
(また高卒投手についてはマイナーリーグで少なくとも3、4年プレーしてはじめてメジャーに昇格するのが一般的なようです)
そのリスクを承知の上で挑戦することを選択する選手は、
将来日本のプロ野球でプレーしたいと思った場合のリスクなど気にとめないのではないでしょうか。

■法的にみると
仮に優秀選手の海外流出防止というルールの目的に合理性があるとしても、
こうした手段、方法で大谷投手のNPBへの復帰を制限することは、
大まかにいって、
・ 12球団の共同ボイコットにより野球選手として参稼することを一切認めない点で、
共同の取引拒絶等にあたり、独占禁止法に抵触するおそれがある
(独占禁止法が野球選手の獲得市場に適用されるか等、論点はありますが)
・ 職業選択の自由を過度に制限するおそれがある
(大谷投手にはどういう進路を決断するにせよ長く活躍してほしいですが、プロ野球選手の寿命の平均は約9年とも言われていて、一般社会人よりずっと短いです)
という2つの問題点があると思います。

■代替案は?
実効性に疑問があって、法的にも問題点がある。
そうしたことからか、報道によると、「田澤ルール」の見直しも12球団で協議されているようですが、
「ルール」がこの海外流出問題を解決するのでしょうか。
「ルール」という点でいうと、問題の構造上、
少なくとも国内のルールつまり12球団の間の合意では直接の解決につながらず、
MLBとNPBの間で正面から新人選手獲得交渉のルールについて議論してルール化する必要があります。

また「ルール」を離れてみると今回の件は、進路、就職先の選択がテーマです。
そうすると、本質的には、「田澤ルール」の変更で解決する問題ではなく、
日本のプロ野球選手の魅力をこれまで以上に高め、
かつ、実際に感じてもらうことで解決する問題のように思います。

もし国内の「ルール」を議論するのであれば、
選手の移籍の自由と国内リーグ全体の発展の最適なバランスを考えて、
・保留制度
(海外FA資格を取得して、海外のリーグに自由に移籍できるようになるには、最短でも9シーズンも要します)
・ポスティング移籍
(近年、岩隈選手や中島選手など、入札したメジャー球団との移籍交渉が決裂するケースも増えてきています)
などの制度を見直す。
指導、育成面を含めてプロと高校・大学間の交流をより活性化させる。
(元プロ野球選手は、一般人と異なり、教職免許と2年の実務経験がないと高校野球の監督・コーチになれない、というアマチュアルールが問題です)
こうしたことが解決の切り口にならないでしょうか。

■今後の行方は
さて、大谷選手は、先週のドラフト会議で、日本ハムファイターズから1位指名されました。
当初、日本のプロ野球も視野に入れて、いわゆるプロ志望届を提出していたことから、
NPBは大谷選手を指名することはNPBとアマチュア(学生野球協会)との間の合意上は可能で、
日本ハムは少なくとも国内的には来年3月末まで独占交渉権を持ちます。
(日本ハムは年内を交渉期限とする方針とも報道されています)

今後の動向がとても気になります。

※本ブログの内容は、所属している団体等の見解ではなく、全て個人の見解です。

コメントを残す