ステルスマーケティングはどこまで適法か?

Posted on Posted in entertainment, internet, startup

「友人から依頼を受けてブログを書き、30万円を受け取った」

先週末、「ペニーオークション」と呼ばれるネットオークションサイトの運営者が詐欺容疑で逮捕・摘発されました。このことがきっかけで、何人かのタレントが、実際にはオークションで落札していないのに、自身のブログで、「○○をオークションでゲット」などと嘘の書き込みをしていたことがニュースになりました。

今回のペニーオークションの事件に関しては、詐欺ではないか、なども含めたいくつかの問題がありますが、今回は、インターネットを用いたいわゆる「ステルスマーケティング」(消費者に宣伝と気付かせないような宣伝行為をすること)に関する法律問題について綴りたいと思います。

☞ ステルスマーケティングの動向

一昔前までは、2008年に日本マクドナルドが発売した「クオーターパウンダー」の宣伝で、アルバイトスタッフを「サクラ」として徹夜で店の前に並ばせた騒動など、リアルな世界におけるステルスマーケティングが多く見られましたが、最近では、ソーシャルメディアの普及に伴って、インターネット上でのステルスマーケティングが多くなってきています。

記憶に新しいニュースでは、今年2012年のはじめに、皆さんもおそらく利用している大手のグルメサイトが、やらせの口コミ投稿業者に宣伝の依頼をしていたことが発覚し、いわゆる口コミサイトにおけるステルスマーケティングが社会問題となりました。

そして、今回のペニーオークションのケースでは、サイト事業者が、タレントに対して、実際には落札していないのに、落札したかのように見せかけるよう依頼することによって、消費者に気付かせないようにペニーオークションを宣伝していた点が問題となっています。

それでは、このようなインターネット上でのステルスマーケティングについては、何か法規制があるのでしょうか。

☞ 景品表示法による表示規制
インターネット広告上の商品表示に関しては、「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)という法律が規制を施していることはご存じの方も多いかと思います。

この法律は、不当な表示や景品類の提供によって一般消費者が正常な選択・判断ができなくなることを防ぎ、一般消費者を保護することを目的としています。

この景品表示法によれば、事業者が、自己の供給する商品の品質や内容について、実際の商品内容や他の事業者の商品内容などよりも著しく優良であると一般消費者に誤認させる表示をすることや、その価格などの取引条件について、他の事業者の取引条件よりも著しく有利であると一般消費者に誤認させる表示をすることを、いわゆる「不当表示」として禁止しています(同法第4条1項をご参照下さい)。

たとえば、食べ物のブランドや原産地の表示、アクセサリーの原材料の表示、ダイエット商品の効果の表示、予備校の合格実績の表示などについて、虚偽の表示をすることなどが典型例です。
たしかに、このような虚偽の表示がなされたのでは、一般消費者が商品を品質や内容を誤認してしまい、正常な選択・判断ができないので、規制をする必要があるでしょう。

もっとも、商品を販売する事業者としては、市場競争の中で利益を出すために、その商品の品質や内容などについて、ある程度誇張した表現(「○○実績ナンバーワン!」など)を使った広告をせざるを得ないのが現実ですし、世の中を見渡しても、そういった表現は溢れかえっています。

このような表示を全て規制したのでは、事業者の経済活動に対する過度な規制となってしまいます。他方で、一般消費者としても、事業者が商品を売ろうとして多少は誇張な表示を使っていることを理解しています。
そこで、景品表示法は、「不当表示」として規制される表示の要件を、単に「優良」・「有利」でなく「著しく優良」・「著しく有利」とし、また、「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる」表示に限定することで、事業者と一般消費者保護の利益の調整を図っているのです。

☞ ステルスマーケティングの問題点
今回のペニーオークションのケースに戻ってみましょう。
オークションサイトの運営者がタレントに依頼して、そのブログで、「○○をオークションでゲット」などと書き込みをしてもらった場合、一般消費者からすれば、オークションを運営する事業者とは関係のない、いわゆる中立的な立場にある第三者がそのオークションのサービスや商品を勧めているように見えてしまいます。
そのため、一般消費者としては、これがサイト運営者による宣伝であるとは気付かず、「●●(タレント名)がそのオークションで商品を買っているのなら、そのサービスや商品はよいものに違いない」などと誤解をし、その結果商品の購入に際して正常な選択・判断ができなくなってしまいます。
このように、「消費者に、宣伝と気付かせない宣伝」というステルスマーケティングは、一般消費者を誤認させるという問題点を内在的に含んでいるのです。

そのため、以前からステルスマーケティングは景品表示法の不当表示に該当するとして違法になるのではないか、という疑問が投げかけられていましたが、平成23年10月28日、消費者庁がようやくその見解を公表しました。

消費者庁の公表によると、
「広告主が、(ブログ事業者を通じて)ブロガーに広告主が供給する商品・サービスを宣伝するブログ記事を執筆するように依頼し、依頼を受けたブロガーをして、十分な根拠がないにもかかわらず、「△□、ついにゲットしました~。しみ、そばかすを予防して、ぷるぷるお肌になっちゃいます!気になる方はコチラ」と表示させること」
は、一般消費者を誤認させるものであるとして景品表示法上の不当表示として問題があるとされました。

また、大手のグルメサイトが、やらせの口コミ投稿業者に宣伝の依頼をしていたことが発覚したことを受けて、消費者庁は、2012年5月9日、
「 商品・サービスを提供する店舗を経営する事業者が、口コミ投稿の代行を行う事業者に依頼し、自己の供給する商品・サービスに関するサイトの口コミ情報コーナーに口コミを多数書き込ませ、口コミサイト上の評価自体を変動させて、もともと口コミサイト上で当該商品・サービスに対する好意的な評価はさほど多くなかったにもかかわらず、提供する商品・サービスの品質その他の内容について、あたかも一般消費者の多数から好意的評価を受けているかのように表示させること」
についても同様に不当表示として問題があると公表しました。

とはいえ、消費者庁によれば、
「具体的な表示が景品表示法に違反するか否かは、個々の事案ごとの判断されることになります」
とのことですので、明確な線引きはなされていない状況です。
いずれにせよ、インターネットを用いてステルスマーケティングを行う事業者としては、その表示が「著しく優良」「著しく有利」といえるかなどといったことを個別具体的に検討することが必要となるでしょう。

☞ 違反をした事業者のペナルティ
事業者がこの判断を誤って不当表示を行ってしまった場合、消費者庁によって、①その行為の差し止めや、②その行為が再び行われることを防止するために必要な事項等を命じられる(「措置命令」といいます)ことになり、更にこの命令に従わない場合、事業者の代表者などは2年以下の懲役又は300万円以下の罰金が、また、当該事業者は3億円以下の罰金が科せられるリスクがあります。

この点について、ネット広告の歴史が日本よりも長いアメリカにおいては、連邦取引委員会(FTC)が2009年12月に「広告における推薦及び証言の使用に関するガイドライン」 を公表しています。この中でFTCは、広告主からブロガーに対して商品・サービスの無償での提供や記事掲載への対価の支払いがなされるなど、両者の間に重大なつながり(material connection)があった場合、広告主のこのような方法による虚偽の又はミスリーディングな広告行為は、FTC法第5条で違法とされる「欺瞞的な行為又は慣行」に当たり、広告主は同法に基づく法的責任を負う、との解釈指針を示しています。
つまり、冒頭の掲げた「友人から依頼を受けてブログを書き、30万円を受け取った」などという事態になれば、その広告主であるオークション運営者は消費者に対して法的責任を負うことになります。

日本では、このことにより広告主が直ちに消費者に対して法的責任を負うというレベルまで明確な法規制はされていません。
ですが、ステルスマーケティングによる「ヤラセ」が発覚した場合には、措置命令以上に、消費者からの信頼を失ってしまうという点に大きなリスクがありますので、いずれにせよ事業者には慎重な配慮が求められることになるでしょう。


参考
消費者庁:「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示
法上の問題点及び留意事項」の一部改定について
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/120509premiums_1.pdf

コメントを残す