広がる電子書籍市場。作家、出版社をとりまくルールはどう変わる?

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注目のニュースがありましたので更新です!

「電子書籍の権利、現行出版権の拡張で」中川正春氏ら提言
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0402V_U3A400C1000000/?df=2

私たちの書籍の読み方、買い方は既に変わり始めています。例えば漫画を読もうと思えば、少し前までは週刊誌を買うか、単行本を買う、というのが当たり前でしたが、「宇宙兄弟」(作者:小山宙哉さん)をIpadで購入して読みました、という声も日常的に聞こえてきます。ソニー「Reader」、楽天「kobo」、アマゾン「Kindle」など電子書籍端末が次々リリースされる、電子書籍を購入できるネットストアも増えてきている、といった具体に電子書籍普及のインフラができつつあります。

その一方で、まだまだユーザーが読める電子書籍の数が少ない、インターネット上で多くの海賊版が流通している(その結果、作家に作品創作の対価が十分に還元されない)、などの課題も指摘されています。
冒頭ご紹介した法改正に向けたニュースはこうした現状の課題と関係しています。
今回は、紙による出版を念頭に作られた著作権法はデジタル時代においてどう変わっていくのか、今後の作家と出版社(者)の関係への影響は、という話を簡単に綴ってみます。

☞ 出版者の権利のあり方に関する提言

現状の課題であるオンラインの海賊版対策、電子書籍の流通促進、という観点からどういった法制度、ルールが望ましいのか。昨日のニュースで取り上げられた提言は、紆余曲折を経て出されたものです(※少し長くなりますので一番後ろでまとめています)。
提言自体は、A4一枚でとてもシンプルです。
デジタル時代を対応するために「著作者との契約により設定される現行の出版権が、原則として電子出版にも及ぶよう改正」するという内容です。

では、この提言に沿った法改正が実現した場合、具体的にはどういう効果があるのでしょうか。
今の出版権の対象は紙の出版に限定されていますが、改正により、
出版社と作家さんが合意、つまり出版契約することで、出版社が電子出版も対象とする出版権を持つことができます
(契約時に出版されている過去作品も含めることができます)。
この電子出版を含む出版権を持つことで、出版社は、
・自分でオンライン海賊版の差止・損害賠償請求等の訴訟をすることができる
(今の法律だと、作家さんが弁護士にお願いして訴訟を起こす必要があるが、その必要がなくなる)
・自ら電子出版することはもちろん、例えばアマゾン、楽天などの電子書店に配信のライセンスを与えることもできる
(現行法の出版権ではサブライセンスも禁止されています)
などの効果があります。
これは、「インターネット上で多くの海賊版が流通している」、「まだまだユーザーが読める電子書籍の数が少ない」といった冒頭ご紹介した課題の解決策となり、また出版社がデジタル時代に適応することを支えるものと思います。

☞ 今後の作家と出版社の関係への影響は?

当初、作家さんとの合意、出版契約がなくとも、法律に基づいて(一定の要件の下自動的に)出版者に権利(著作隣接権)を認めるという議論もありました(例えば、レコード製作者(レコード会社など)と同じように、出版者についても著作隣接権を持たせるべきという議論は古くからあります)。
しかしながら、最終的には、電子出版の権利を得るためにはあくまでも作家さんと合意(出版契約)することが必要という内容の提言がされています。一律に法律で出版社に権利を与えるのではなく、作家さんが出版社に権利を与えるかどうかを決める、ということです。

出版社にとっては契約を締結するとメリットが大きいが契約を締結しないとメリットが得られない。
これまでの慣行もありますが、こうした契約を結ぶことにインセンティブを持たせるルールの設定を通して、実際に書面による契約締結の促進につながることが期待されます。
契約締結が促進されることで、出版社は世の中にたくさんに作品を展開することができますし、それは同時に私たちの手元に届く作品の数も増え、「まだまだユーザーが読める電子書籍の数が少ない」ということが解消される一助になります。
こうした流れでみると、(もともと指摘があったところでもありますが)作家さんと出版社の間の契約が今まで以上に大切になるのは間違いなさそうです。

☞  新規参入による出版業界活性化も期待

作品の流通の方法が多様化し、作品流通にかかわるプレーヤーが増える。
こうした背景の下、作家、出版社をとりまくルールもようやく変わろうとしています。
最終的に立法に至る過程でどう変わっていくか、これは今後の動向を見守りたいですが、これまで出版文化を支えてきた既存出版社を守るというだけでなく、今後は異業種から出版業界への参入も促進されることも期待されています(経団連提言)。
法改正により、既存の出版社がデジタル時代に対応することができる、電子書籍市場への新規参入も促される。その結果、シュリンクしてみえる出版業界全体が活性化し、たくさんの面白い作品が生み出され、読者に広がるきっかけの一つになる。こうした結果につながると普段法律の仕事をしている身として大変嬉しいです。

報道によると、2014年通常国会での法制化を目指す、とのことです。
引き続き動向が気になります!

 
(※)
提言自体はシンプルですが、オンラインの海賊版対策、電子書籍等の利用・流通の促進等の観点からどういった法制度が望ましいかという視点でとても緻密な分析、議論がされています。
以下のような経緯で昨年からオープンに議論がされてきました。
①大手出版社や国会議員などで構成される「中川勉強会」が著作隣接権の議員立法提言
http://www.mojikatsuji.or.jp/benkyoukai121108.pdf
②経団連が電子出版権の新設提言(①の提言に反対)
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/016.html
③「中川勉強会」が法学者・弁護士ら6名の提言を検討し、勉強会の提言とすること公表
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~ip/20130404teigen.pdf
・上記①②③いずれも出版者自ら海賊版対策で訴え提起できる点では共通しています。
・上記①と、②③の主な違いは、
1、出版者に対し、契約に基づくことなく発生する権利(著作隣接権)として権利を付与するか、それとも契約に基づく権利を付与するか(電子出版権の新設ないし現行の出版権の拡張)
2、出版者からアマゾン、楽天などのプラットフォームなどの第三者にサブライセンス(再利用許諾)できるかどうか、などです。
・③では、出版権に限らず、権利情報の登録制度の拡充などコンテンツの活用促進に関しより大局的な視点からも提言がされています。
・各提言の詳細については上記リンク先をご覧ください。

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