投稿サイトの運営者はどこまで責任を負う?

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「『食べログ削除して』札幌の飲食店経営者が提訴」

先日、こんなニュースが報道されました。

「食べログ」の投稿をめぐっては、昨年も世間を騒がせるニュースがありましたが、今回は、札幌市の飲食店経営の男性が、「食べログ」に、「料理が出てくるのが遅い」「おいしくない」と事実と違う内容を投稿されて顧客が激減したとして、サービス運営者であるカカクコムに対して、店舗情報の削除と220万円の損害賠償を求め、札幌地裁に提訴したという内容です。

さて、この請求は、はたして認められるのでしょうか。

個人的には、請求が認められる可能性は低いと思いますが、今回は、その判断のポイントを綴ってみました。

☞ 営業上の利益の侵害と不法行為
ニュースによると、飲食店側は、「批判的な投稿によって来店客が減り、営業上の利益が侵害された」と話しているようです(*1)。

訴状を読んでいないため、正確な内容は分かりませんが、飲食店側の主張が「お店を批判する内容の投稿によって、お店の営業が妨害され、または信用や名誉が毀損され、これによって、顧客が激減して売上が減少したという損害を被った」、ということであれば、法律上は「不法行為」と位置付けることができます。

細かい説明はかなり省略しますが、この「不法行為」が成立するかどうかの判断のポイントは、①投稿者による投稿が違法であることと、②カカクコム側が、投稿が違法であると知ってまたは知り得る状況でこれを削除せずに放置したこと、の2段階に整理することができます。

☞ ①投稿が違法であることとは?
まず、「食べログ」のようなサービス運営者の不法行為が認められるためには、投稿者による投稿内容が違法であることが必要となります。

では、違法かどうかは、どういった基準で判断されるのでしょうか。

ここでは、投稿の目的(嫌がらせ目的、ライバル店の信用を下げる目的等の有無)や、投稿の内容(虚偽、その他意見・論評としての域を超える内容等)などがポイントになると考えられます。

今回のケースでは、投稿者の投稿の目的ははっきりしませんが、「料理が出てくるのが遅い」「おいしくない」という記載のみの場合、遅いかどうか、美味しいかどうかは投稿者の主観、評価の問題でもあり、本当か嘘かを判断することはできないか、少なくとも困難です。またお店に対する意見・論評としての域を超えるとまでは言えないでしょう。

そうすると、投稿の目的次第で結論が変わる可能性もありますが、飲食店が、投稿内容が違法だと証明することは、かなり難しいかと思います。

☞ ②投稿を削除せずに放置したことで責任を負う?
仮に、投稿が違法だといえる場合には、次は投稿を削除せずに放置したことが違法かどうかを判断することになります。

先ほど見た「投稿をする」という積極的な行為とは異なるのですが、法的には、サービス運営者が「投稿を削除しないこと」という消極的な行為、一定の不作為についても「不法行為」に含まれることは確立したルールです。

また、サービス運営者の責任に関しては、サービス運営者がサイト上の投稿内容の違法性を知りつつ(または注意すれば知ることができたにも関わらず)これを放置した場合には、サービス運営者も責任を負う可能性があります(*2、3)。

サービス運営者が責任に関するニュースで記憶に新しいところでは、口コミ投稿の違法性に関する問題ではないため今回のケースとは少し異なりますが、楽天市場のケースがあります。このケースでは、「チュッパチャップス」の商標権を侵害するコピー商品が販売され、サービス運営者である楽天がそれを放置したとして、チュッパチャップスの商標権者から楽天に対する訴えが提起されたのですが、結論としてサービス運営者が違法行為を放置した場合に差止や損害賠償の責任を負いうるという判決が出たことが昨年注目を浴びました(*4)。

今回のケースでも、営業上の利益の侵害を根拠に挙げた場合には、仮に投稿者による投稿が違法と判断される場合であっても、カカクコムが、投稿が違法であると判断するに足りる主張、証拠などの存在を知りながら放置したなどといった事情が認められない限りは、カカクコムに対する請求(*1)は認められない可能性が高いでしょう。

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ところで、サービス運営者であるカカクコム側としては、裁判では負けないだろうから何も心配はいらない、ということになるのでしょうか。

必ずしもそういう心境ではないかもしれません。

一般的に、サービス運営者としては、おそらく裁判では負けないと感じていても、サービスの根幹にかかわる部分で万が一でも負けるようなことがあれば、これに便乗した他の会員たちからも、同じような投稿内容を理由に、次々と損害賠償などを求められるリスクがあります。会員数の多いサービスになると、投稿の数は膨大な量になり、また社会の関心も非常に高いところですので、そのリスクは軽視できないでしょう。

ということで、様々な問題を含む今回のケース。この裁判の行方には今後も注目したいところです。

*1 投稿内容の削除の請求と損害賠償の請求は異なるものです。投稿内容の削除を請求する場合には、人格権としての名誉権の侵害を主張するケースが多く見られます。

*2 プロバイダ責任制限法(略称です)という法律も別途検討が必要になります。この法律によれば、プロバイダは、情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき、又は、情報の流通を知っていた場合で、それが権利侵害にあたることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき場合には、サービス運営者は責任を負わないものとされています。

*3 サービス運営者の責任に関しては、「一切損害賠償責任を負わない」と規定する「食べログ」の店舗会員規約(http://tabelog.com/help/owner_rules)との関係も別途問題となり得、この関係もとても大切となります。本文での検討はこの利用規約による免責が受けられない場合を念頭においています。

*4 このケースでは、サービス運営者が出店者による商標権侵害を知ったときまたは知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるに至ったときは、その後の合理的期間内に侵害内容のウェブページからの削除がなされない限り、商標権侵害を理由に、出店者に対するのと同様の差止請求と損害賠償請求をすることができる(要旨です)、と判断されました。正確な内容についてはリンク先の判決文をご覧ください(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120216101709.pdf)。 

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