スタートアップが知っておきたい法律知識③ ビジネスモデルによる法的リスクの違い~Eコマースの場合は?

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昨年から今年にかけてEC関連のニュース、リリースを多数見かけます。

「Yahoo!ショッピング、最短5分で開店できる「ライト出店」用ツール公開 スマホから出店もOK」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1401/22/news129.html
「ベール脱いだLINE MALL スマホECの本命へ 」
http://www.nikkei.com/article/DGXZZO64677950X21C13A2000000/
「ネットに躍り出る“個人店主” CtoC元年到来」
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO65069900Z00C14A1000000/

市場も今後さらに拡大しそうです。
(「BtoC EC市場規模の推移(2008年~2012年)」経産省の電子商取引に関する市場調査より)
EC市場
ECの動向が改めて注目されている今のタイミングで、ECのビジネスモデルの構造により、法的リスクが違ってくることについて、ウェブサービス事業者の立場から簡単に確認してみたいと思います。

 

■ECのビジネスモデルを法的にみると
オンラインの商品販売に携わる場合、大きく、ウェブサービス事業者自身が商品を販売する直販型、ウェブサービス事業者が商品を販売する出店者に「販売の場」を提供するモール型、大きく分けて二つがあります。

上記の直販型の例がZOZOTOWN、

ZOZO

上記のモール型の例が楽天市場、

楽天

直販型とモール型(Amazonマーケットプレイス)の両方を使い分けているのがAmazonです。

amazon

これは、各ウェブサイトのトップページや商品販売ページのフッターなどにリンクのあるユーザー向けの「利用規約」、「注意事項」、「特定商取引法に基づく表示」などを見ればわかります(注1)。

 

■ビジネスモデルによる法的リスクの違い
さて、ウェブサービス事業者の視点でECに関してまず知っておきたい法的知識は、直販型、モール型の選択により、法的なリスクが違うという点です。つまり、ウェブサービス事業者が対応するべき規制、リスクヘッジの視点や方法が異なってくるということです。

(1)直販型の場合は
まず、ユーザーとの関係についてみてみましょう。直販型の場合、ウェブサービス事業者と商品を購入するユーザーとの間で売買契約が成立します。この場合、ウェブサービス事業者が商品のラインナップ、価格その他の条件を決定できることになります。その半面、ウェブサービス事業者はユーザーに対して商品を提供する責任を負いますし、商品の遅配、不具合、不良品などによりユーザーからクレームがあった場合は対応をする責務も生じ得ます。
次に、法律による規制についてみてみましょう。商品を販売するウェブサービス事業者には、特定商取引法、景表法が適用され、また販売する商品の種類に応じて、古物営業法、薬事法(注2)などが適用されます。ですので、販売する商品の選択に際して販売に許認可が必要な商品かどうかをチェックし、またPC・スマートフォン用の画面等の構成・デザインなどに際し、これらの法律に目配りして、適法性を担保することが大切です。

(2)モール型の場合は
これに対し、モール型の場合はどうでしょうか。
まずユーザーとの関係をみます。モール型の場合、ウェブサービス事業者は、出店者に対して「販売の場」を提供するにすぎないと考えられています。従って、直販型と異なり、商品を購入するユーザーと出店者の間で売買契約が成立します。商品ラインナップ、価格その他の販売条件を決定することができるのも基本的には出店者です(ただし、出店者向けに商品販売のガイドラインを設けているウェブサービス事業者もあります)。商品の遅配、不具合、不良品などに伴う責任を負うのも出店者です(注3)。
また、法律による規制についても、あくまで販売の場を提供しているにとどまるのであれば、上記(1)で挙げた法律に一次的に留意すべきなのも、ウェブサービス事業者ではなく、出店者です。ウェブサービス事業者は、出店者が法律を遵守できるように必要に応じてサポートするという役回りになります。

(3)まとめ
以上の違いを簡略化してまとめると以下のとおりです。

 直販型モール型
商品の販売条件ウェブサービス事業者
が決定
出店者が決定
商品を購入するユーザー
に対する法的責任
ウェブサービス事業者
が負う
出店者が負う
商品販売について
の法規制
ウェブサービス事業者
が名宛人
出店者が名宛人

ビジネスモデルをブラッシュアップするときには、上記のECの例で示したように、ビジネスモデルの選択により法的リスクや法規制が異なってくることに配慮が必要だったと思い出してもらえればと思います。

 

(注1)「特定商取引法に基づく表示」の中で商品の販売業者(売主)は明示されます(特定商取引法11条5号、同法施行規則8条1号)。
「利用規約」のサービス内容、ウェブサービス事業者の免責に関する条項に販売主体に関する記載があることがあります。
モール型の場合、「注意事項」などでウェブサービス事業者は「販売の場」を提供しているにとどまり、商品を購入するユーザーと出店者の間で直接行っていただくものです、という趣旨の記載があることも多いです。
なお、本文では簡略化して一例をご紹介していますが、オーダーメイドで直販型、モール型の内容を修正することも可能です。実際にはビジネスモデルの形は多様で、他の法形式で運営しているウェブサービスもあります。複数の利用規約を比較、分析してみると面白いです。

(注2)一般用医薬品の通信販売規制をめぐっては、ネット販売を一律禁止していた厚労省令を無効とする最高裁判所の判決が昨年平成25年1月11日に出ました(判決文はこちらでご覧になれますhttp://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130111150859.pdf)。
その後、薬事法の一部改正につながりましたが、医療用医薬品から一般用医薬品に移行して間もなく一般用としてのリスクが確定していない薬については、なお一定期間ネット販売が禁止されています。(http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/pdf/131218-1-1.pdf)。
報道によると、ケンコーコムは本日、1月27日付で新薬事法を憲法違反であるとして東京地裁に国を提訴したようです。動向が注目されます。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL270LG_X20C14A1000000/

(注3)上記のモール型であっても、一定の場合にはウェブサービス事業者がユーザーに対して、法的な責任を負うという議論があります。
・ウェブサービス事業者が特定の商品の紹介にとどまらず商品を推奨するような場合
・購入するユーザーがウェブサービス事業者を販売主と間違って認識する場合
・出店者・ユーザー間のトラブルを放置するような場合
などです。
したがって、ウェブサービス事業者のリスクヘッジとして、
・品質に対する主観的な判断が入らない形で広告・プロモーションをすること
・商品の販売主体などを誤解させないようなウェブ・画面のデザインとすること
・出店者とユーザーとの間でトラブルが発生した場合に対応できる体制を準備すること
なども検討することが大切です。

■参考資料
「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(経産省)
http://www.meti.go.jp/press/2013/09/20130906006/20130906006-3.pdf
「平成24年度我が国情報経済社会における基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」(経産省)
http://www.meti.go.jp/press/2013/09/20130927007/20130927007.html

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