映画の海外リメイク製作の実情 ~権利処理編~

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 最近、日本の映画やテレビなどのコンテンツを原作として、海外でそのリメイクを製作するというケースがよく見られるようになりました。
 少し前までは、「家政婦のミタ」など、日本の原作をベースに韓国版リメイクが製作されることが多く見られましたが、最近は、福山雅治が主演を演じた「そして父になる」といった映画や、映画以外にもアニメやゲームなどのハリウッド版リメイクが製作されはじめるようになりました。
そこで、今回は、映画等のリメイクを製作する場合に必ず必要となり、しかも、大きな壁となる「権利処理」という作業について綴ります。

☞ 「権利処理」とは?
 例えば、ある映画作品を原作とするリメイク映画作品を作る場面を考えてみましょう。
 勝手に作ってはいけない、ということをご存じの方は多いかと思いますが、その理由の一つは、原作映画の著作権を侵害するからです。
 つまり、原作となる映画は、「著作物」として著作権法上の保護を受け、著作権者の承諾なくして勝手に原作映画をリメイクすること(著作権法では「翻案」と呼ばれます)は、著作権侵害となります。
 もし、著作権者の承諾なく、勝手に原作映画をリメイクしてしまうと、著作権者からリメイク作品の製作・利用の差止請求や損害賠償請求を受ける可能性が生じます。
特に、ハリウッドでのリメイクということになれば、製作費が100億円を超えるようなものもありますから、それだけの大金をかけて製作した映画の利用が差し止められる可能性が生じることは、極めて大きなリスクとなります。
 このようなリスクをなくすために、権利者から承諾をもらうなどして、権利者の権利を侵害しないよう処理する作業が、いわゆる「権利処理」と言われるものです。
 この「権利処理」は、日常的な場面においても、よく必要になります。例えば、自分のブログやFBに他人の写真を掲載したりする際に、その写真を撮った人(著作権者)やその写真の人(肖像権者)から使用の承諾を得る作業なども「権利処理」の一つです(現実には得られていない場合がほとんどですが・・)。 

☞ 映画の著作権者は誰?
 映画の著作権は、著作権法上、自らの決定とお金の負担により映画を製作した人(または会社)が持っていることが通常です(*1)。
 彼ら/彼女ら/それらは、著作権法上、「映画製作者」と呼ばれ、具体的には、配給会社、テレビ局、広告代理店、出版社などが、製作委員会という組合を作って、みんなで著作権を共有している場合が多く見られます(海外ではあまり見られない「日本的」なやり方です)。
 この場合、映画のリメイクを作るにあたっては、これらの原作映画の著作権を持つ人たち(共有している人たちも含む)全員から承諾をもらうことが求められます。

☞ 原作映画の著作権だけではない!
これまでは、原作映画の著作権という視点から、権利処理が必要な理由を説明してきましたが、権利処理の対象となる権利は、実は原作映画の著作権以外にもあります。
 ① 著作者人格権
 例えば、少しややこしい話ですが、プロデューサー、監督、ディレクター、撮影監督、美術監督など、「原作映画の全体的形成に創作的に寄与した」といえる人は、原作映画の著作者として、「著作者人格権」という権利を持っています。
 「著作者人格権」とは、著作者の著作物に対して有する人格的利益を保護する権利であり、これには、著作物を意に反して改変されない権利(同一性保持権)が含まれます。
 したがって、原作映画の内容を勝手にリメイクしてしまうと、同一性保持権を侵害したとして、出来上がったリメイク作品の利用が差し止められてしまうリスクが生じます。

 ② 脚本その他原作映画の構成要素に対する権利
 その他にも、例えば、原作映画の脚本や、原作映画で使用された音楽なども、原作映画とは別に独立して著作権の対象となります。
したがって、この場合ですと、脚本家や音楽の作詞・作曲家に無断で、脚本の内容や楽曲を使ってリメイク作品を作ってしまうと、脚本家や作詞・作曲家からも、同様に著作権侵害でリメイク作品の差止めなどを訴えられるリスクがあるのです。

 このように、原作映画には、様々な権利が交錯しており、リメイク作品を作る際には、その全ての権利者から承諾を得る作業が求められます。

☞ 現実の運用と今後の課題
 従来、日本国内で映画のリメイクを製作する際には、いわゆる「仲間内」で、口約束や、簡単な契約書、承諾書が作成されるにとどまっており、原作映画に関わる全ての権利者から書面などで承諾をとっていなくても、訴訟に発展するようなクレームは少なく、出来上がったリメイク作品の上映が差止められたりすることはほとんどありませんでした
 ですが、ハリウッドでリメイク製作をする場合には、アメリカが契約社会であることや、訴訟社会であること、そして、製作費が日本での映画製作の数十倍以上にもなることから、万が一でも、権利処理不足が原因で差止めがなされるリスクを限りなくゼロにすることが求められます。
 また、ハリウッドにおいては、E&O保険(*2)への加入、ファイナンサーからの資金調達、リメイク作品の利用に関する各種契約締結などの前提条件として、かなり厳格な権利処理を求められるのが通常です(*3)。
 このように、権利処理の程度については、日米のギャップがかなり大きく、これを乗り越えなければ、日本のコンテンツを原作として海外(特にハリウッド)でリメイクを作ることはできません。
 厳格な権利処理に慣れていない日本のエンターテイメント業界において、この大きなハードルをどう乗り越えるかが、今後の海外リメイク製作の大きなポイントとなるでしょう。
 権利処理をする際に実際に問題となる点や、それをどうクリアするかについては、今後の機会に綴ってみたいと思います。

*1 場合によっては、プロデューサーや監督、または彼らの所属する会社が著作権を持つケースもあります。
*2 出来上がった映像コンテンツが第三者の著作権などの権利を侵害しているなどとして、訴訟が提起され、製作者が敗訴した場合における損害賠償額や弁護士費用などを補償する保険。アメリカでは、製作費が莫大であるため、この保険が掛けられることが多いが、日本では(まだ)見られない。
*3 原作者、脚本家、監督、その他スタッフ・出演者の契約書や承諾書、音楽、商標に関する権利者の契約書や承諾書、弁護士の意見書など、日本では考えられないほど多くの書類(しかも詳細な内容)が求められます。

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