スタートアップが知っておきたい法律知識⑥ 営業秘密を守る法律はどう変わる?

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非公開の技術・ノウハウ等をどう守るか、喫緊の課題です。

中途退職者の転職・独立起業、他社との取引等に際し、機密情報が流出するケースが顕在化しています。
例えば、昨年12月にも、東芝が韓国のSKハイニックス社が機密情報を不正に取得・使用したとして東京地裁に損害賠償請求を求める訴訟を提起していた件について、330億円の和解金で和解したことが報道されています(※1)。
昨年の7月には、ベネッセの顧客情報が業務委託先から複数の名簿業者に流出した件についてメディアで大きく報道されたことも記憶に新しいところです(※2)。

今後、政府の「日本再興戦略」の閣議決定等を受けて、営業秘密を守る制度等が強化される見込みです。スタートアップとしても制度、ルールを上手に活用することがこれまで以上に大切になりそうです。

■制度、ルールはどう変わる?

現在も営業秘密を侵害する行為は、営業秘密保護のルールを定める不正競争防止法(以下「法」といいます。)で禁止されています。
もっとも、法的救済が実効的ではない場合もありました。
そこで今後、政府の「日本再興戦略」の閣議決定等を受けて、刑事、民事両面で抑止力を引き上げていく施策が打たれ、機密情報の流出等をこれまで以上に抑止できる制度になる見込みです。

例えば、
・ 刑事罰の範囲の拡大(情報の3次取得者以降の転得者等、国外犯、未遂行為の処罰)、
・ 刑事罰の法定刑の引上げ、
・ 非親告罪化(漏洩被害者の告訴がなくとも検察官は起訴が可能となる)、
・ 民事訴訟での原告の立証の負担の軽減(一定の場合に、被告側が原告の技術・ノウハウ等を使用していないこと(独自創作の技術・ノウハウ等であることなど)についての立証責任を負う)、
・ 営業秘密使用物品の譲渡・輸出入の禁止の導入、
・ 除斥期間(一定の期間の経過によって権利が消滅する制度)を20年に延長
等の法改正がされる見込みです(※3)。

■スタートアップの留意点は?

この制度、ルールを活用するためにスタートアップがまず知っておきたい点は、法律上「営業秘密」として保護を受けるためには、情報が「秘密として管理されている」こと(秘密管理性、と呼ばれます。)が必要な点です(※4)。
秘密管理性を満たすために、スタートアップ企業が比較的簡単にできる対策は、
①機密情報を一般の情報と区別して取り扱う、機密情報のリスト化をする
②秘密保持に関する社内規程を作る、社員のみなさまに秘密保持の誓約書にサインしてもらう
③他社への機密情報開示時にはNDAを結んだ上で、開示する情報にそれが機密情報と分かる表示をする
あたりと思います。

企業の規模、事業・サービスの性質等によっては、ISMSやPマーク等を取得し、それにあわせて社内の営業秘密の管理体制を整備することも選択肢ですし、また、経産省の営業秘密管理指針等も参考になります(※5)。

なお、法改正と同時に、営業秘密の漏えい防止対策を効率的にかつ効果的に実施しうる環境整備も行われます。例えば、特許庁も来月から営業秘密・知財戦略等の相談窓口を設置するようですので(※6)、相談にいけば有益な助言等が得られるかもしれません。

非公開の技術・ノウハウ等を守るためのルール、是非上手に活用してみてください。

(※1)2014/12/19日経電子版「東芝、SKハイニックスから和解金330億円 提携拡大」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ19I08_Z11C14A2MM8000/

(※2)ベネッセの「個人情報漏えい事故調査委員会による調査結果のお知らせ」に事実の概要も掲載されています。
http://www.nikkei.com/markets/ir/irftp/data/tdnr/tdnetg3/20140925/8weeh9/140120140925049069.pdf

(※3)2015年1月16日付けで経産省の営業秘密の保護・活用に関する小委員会の中間とりまとめ案が公開されており、この資料からも営業秘密の保護強化の改正の方向性が分かります。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=595215002&Mode=0

(※4)不正競争防止法第2条第6項
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H05/H05HO047.html
なお、法律上の「営業秘密」に該当する情報については、現行法でも、差止請求が可能となり得る、損害賠償請求に際して損害の立証が容易になる、不正取得等が一定の場合に刑事罰の対象となり得るなどの点で、手厚く保護を受けることができます。

(※5)営業秘密管理指針(全部改訂案)も全面的に改訂される見込みです。この中では不正競争防止法によって差止め等の法的保護の対象となり得る秘密管理措置の水準に関する行政としての理解を示すものとされています。従って、実際に講じるべき施策の水準は法律上の保護以外の観点も考慮して、個別具体的に検討する必要はあります。なお、経産省でベストプラクティス集のようなものも情報公開される見込みのようです。

【2015/1/30追記】
平成27年1月28日付け改訂版が経産省のホームページにアップされています。
http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html

(※6)2015/1/19日経電子版「企業秘密の流出防止、中小の相談窓口 特許庁が2月設置」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS19H7K_Z10C15A1EE8000/
2015/1/19経産省プレスリリース
http://www.meti.go.jp/press/2014/01/20150119001/20150119001.html

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