シンガポールが世界一?世界銀行のビジネス環境ランキング2016比較

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「世界銀行ビジネス環境ランキング:途上国で起業や経営を容易にする改革が加速」

こんな見出しのもと、世界銀行が一昨日、ビジネス環境に関する年次報告書の最新版「Doing Business 2016」を発表したことがニュースになりました。この報告書では、毎年、世界の約190カ国についてビジネス活動における規制や制度的環境を比較評価し、各国のビジネスのしやすさをランキング化しています。

その結果は・・
シンガポールが10年連続の1位、日本は34位(*1)。

今回は、この報告書をもとに日本とシンガポールのビジネス環境の違いを綴ってみました。

☞ どうやって評価が決まるの?
評価される内容は下記の10項目で、各項目におけるシンガポールと日本の順位を比較して両国の差が大きい順に並べてみると・・

<評価項目: シンガポール ←→ 日本>
税金(Paying taxes): 5位 ←→ 121位
事業の始め易さ(Starting a business): 10位 ←→ 81位
建設許可(Dealing with construction permits): 1位 ←→ 68位
資金調達(Getting credit): 19位 ←→ 79位
契約執行(Enforcing contracts): 1位 ←→ 51位
少数株主の保護(Protecting minority investors): 1位 ←→ 36位
不動産登記(Registering property): 17位 ←→ 41位
海外貿易のし易さ(Trading across borders): 41位 ←→ 52位
電力事情(Getting electricity): 6位 ←→ 14位
破綻処理(Resolving insolvency): 27位 ←→ 2位
(*2)

☞ シンガポールと日本の比較
シンガポールと日本で大きく異なる特徴をいくつか見てみましょう。
まず、両国で大きく差がついたのは、やはり税金です。報告書によると、税金の支払額、税率の他にも、申告の準備に要する時間などが評価項目とされており、例えばシンガポールでは法人税率が17%(日本は25.5%。但し、法定実行税率は35.6%)、税金申告の準備・申告・支払に要する合計時間が83.5時間(日本は330時間)と評価されています。その他にも、シンガポールにおいては、キャピタルゲインに対しては非課税であったり、様々な軽減税率の適用制度があったりするなどの点が企業にとって魅力的です。

次に大きく差がついたのが、事業の始めやすさ。ここでは、会社を設立して事業を始める際に必要な手続の数や、時間、コストなどが評価項目とされています。日本では、会社を設立して新規事業をはじめるのに、社印の作成、定款の作成・認証、登記書類の作成、開業届出など必要な手続が多く、比較的時間とコストがかかるのに対して、シンガポールでは、必要な手続きが少なく、要する時間は2.5日程度(*3)、コストも会社登録費用が315シンガポールドル(26,000円程度)と安いという特徴があります。評価項目外でも、例えば、国家の安全にかかわる特定の産業を除いて外国資本による全額出資が認められているなど、規制が緩やかであることも進出企業にとっては魅力的です。

続いて、法務事情として注目すべきなのは、契約執行の容易さ。ここでは、訴訟を提起してから金銭の回収までの時間、コスト、民事裁判のクオリティなどが評価基準とされています。裁判に1年程度を要し、裁判の長期化が問題となっている日本とくらべ、シンガポールでは裁判に要する時間は150日程度と評価されています。また、シンガポールでは日本より裁判手続のIT化が進んでいること(*4)、ケースのマネジメントがうまくなされていること、ADR(裁判外紛争解決制度)が充実していることなどが評価され、日本と大きく差がついています(*5、6)。

その他にも、例えば、少数派株主(投資家)の保護においては、日本よりもシンガポールの方が、利益相反に関する規制、開示に関する規制、取締役の責任、株主による訴訟に容易さ、株主によるガバナンスの度合い、株主の権利などの制度が優れていると評価されています。

他方で、破綻処理のしやすさについては、日本がシンガポールを抜いて世界2位となりました。ここでは、処理手続のスピード、コスト、債権者の手続への参加などが評価されています。

***

企業が国境を超えてビジネスを行うことが一般的になった今、こうやって各国の制度を比較してみることは、日本企業が海外の拠点をどこに置くか、または将来どこの国で起業するかなど検討する意味でも有意義だと思います。
僕自身も、現在シンガポールを拠点に活動していますので、これからも東南アジアからホットな情報をお伝えしていければと思います。

*1 2位以下は、ニュージーランド(2位)、デンマーク(3位)、韓国(4位)、香港特別行政区(5位)、英国(6位)、米国(7位)、スウェーデン(8位)、ノルウェー(9位)、フィンランド(10位)・・・エリトリア(189位)。
日本は、2015年版では29位、2014年版では27位でしたので、近年ランクが下がる傾向にあります。
*2 破綻処理のみ日本の方が上位でしたので、最後に記載しました。
評価の際、治安、市場規模、経済の安定度、汚職などは考慮されていません。
*3 会社登録は申請したその日に完了、社印作成に1日、従業員の保険手続に1日程度。
*4 日本と異なり、訴え提起や準備書面、証拠の提出などがオンラインで可能です。
*5 シンガポール国際仲裁センター(http://www.siac.org.sg/)やシンガポール国際調停センター(SIMC:http://simc.com.sg/)が国内外双方の紛争解決に多く利用されている上、2015年1月には、シンガポール国際商事裁判所(SICC:http://www.sicc.gov.sg/)が設立され運用が開始されました。
*6 その他にも、雇用契約の解消や最低賃金など労働法制なども、労働者より企業に有利な制度です。

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