ベトナムの法律実務 外資奨励と規制緩和の最新動向

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「日本語が『第1外国語』に。ベトナムの小学校で東南アジアで初」

先月、ベトナム政府が、小学校3年に学び始める第1外国語として、英語に加えて日本語を取り入れることを発表しました(*1)。
背景の一つには、日本企業のベトナム進出の増加(と今後の増加の期待)があり、現在ベトナムに進出する日系企業は、今や1500社を超え、在留邦人は1万3千人超、日本によるベトナムへの投資件数も堅調に伸びています(*2)。
ベトナムは、アジアの中心という好立地と、安定した経済成長(2016年のGDP成長率目標は6.7%)や、豊富な労働力(人口約9,000万人、平均年齢約30歳)という特徴に加え、国をあげて投資奨励と規制緩和を進めており、日系企業にとっては魅力的な投資先となりつつあります。

日本による対越直接投資認可額/件数
ベトナム投資
JETRO「2015年ベトナム一般概況」より

☞ ベトナム法の特徴
ベトナム進出にあたり、まず始めに知っておきたい注意点は、ベトナムの法律の内容とその運用が、日本とは主に下記の点で大きく異なることです。
• 法改正が多い
• 行政府の定める政令が多く、法令の要件の細則や解釈の多くが政令に委ねられている
• 行政の担当官や地域によって運用が異なることがある
例えば、直近過去3年間だけ見ても、外資の進出規制を定める投資法、会社設立・運営のルールを定める企業法、不動産のルールを定める住宅法、労使間のルールを定める労働法などが(大)改正されました。
インターネットや本で情報収集を試みても、新旧の情報が錯綜しているため、それが最新情報であるかを確認することが重要です。
また、ベトナム法の条文は、日本よりも大まかに規定されていたり、内容が曖昧なことも多く、その解釈を明確にするため、頻繁に行政府による政令が発布されています(*3)。このあたりは、日本語(や英語)での情報が限られているため、事前に専門化に相談する重要性が高いといえます。
また、行政への申請をした際に、「前回は許可をもらえたのに今回は却下された」とか、「ホーチミンでは大丈夫だったのにハノイではダメだった」などということも起きているため、進出には慎重さが求められます

☞ WTO加盟による市場開放
ベトナムは、2007年にWTOに加盟し、以降、徐々に市場開放の道のりを歩んでいます。
これにより、製造、建設、流通サービス(小売、卸売、フランチャイズ)などに関しては外資100%の進出が認められるようになりましたが、依然として、広告業、通信事業、付加価値業(Web コンテンツ サービスなど)、旅行代理業などは、外国投資家による出資比率の制限があり、ベトナム企業と合弁で事業を行うことが求められる点に注意が必要です(*4)。

☞ 加速する投資奨励措置
投資奨励措置とは、①事業内容や②所在地によって、法人税や輸入税等の減免を受けられるという内容です。
①事業内容という観点からは、2014年の投資法改正により、
新素材、新エネルギー、ハイテク製品、バイオテクノロジー、IT技術、デジタルコンテンツの制作、教育事業、新薬の製剤技術・科学研究、高齢者等の擁護事業や、金額又は雇用者ベースで一定規模を超えるプロジェクトなど
の13項目が奨励措置の対象となっています(*5)。
②所在地という観点からは、困難な経済・社会状況の地域(法令の細則にて詳しく規定)にて行う事業が奨励措置の対象となっています。

☞ 投資禁止分野と条件付投資分野

ベトナムで事業を開始する際には、まず、投資法に規定された「投資禁止分野」または「条件付投資分野」に該当しないかの確認が必要となります。
「投資禁止分野」とは、文字通り事業が禁止される分野で、一定の麻薬物質や化学物質に関する事業などの6項目が対象となります(*6)。
「条件付投資分野」とは、国の治安や、社会の秩序、市民の健康などを守るために、国の定める一定の条件を満たさなければならない分野で、
金融業、酒類事業、物流・運送事業、不動産事業、建設設計事業、出版事業、ソーシャルネットワーキングサービス事業、有料放送・放映サービス事業、教育事業、薬事業、広告宣伝サービス事業、映画製作事業、宿泊施設サービス事業など
の267項目が対象となります(*7)。

☞ 不動産所有解禁の動き
ベトナムでは、外国人(法人)であるか否かを問わず、土地の所有権を保有することはできず、国からリースや使用権の割当を受けて土地を利用することになります。
もっとも、住宅の所有に関しては、2015年に施行された住宅法及びその政令により、外国人/外国法人に住宅の所有が認められるようことになりました(*8)。
ただし、ベトナム人(法人)から購入することができない、マンション1棟の全ユニットの30%までしか売買の対象とならないなどといった制限もあるため、事前の確認が必要です。

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このように、ベトナムでは未だ規制が残る分野も多いですが、近年、投資奨励と規制緩和が加速しており、今後の動向にも目が離せないところです。

*1 産経ニュース:http://www.sankei.com/life/news/160301/lif1603010038-n1.html
*2 進出業種としては、従来から多いのは製造業や卸売業ですが、最近では、飲食店などのサービス業や、スマホのアプリ開発などのソフトウェア業などの進出も目立ってきました。なお、2014年の直接投資額減少の主な原因は、円安により日本の大手企業が海外直接投資を削減したためと考えられます。
*3 日本の会社法の条文数が979条あるのに対して、ベトナムの企業法の条文数は172条のみであり、細かい内容は政令に委ねられています。
*4 出資比率制限対象事業:https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/country/vn/invest_02/pdfs/vn7B010_houteishihonkingaku.pdf
*5 投資法第15条~第18条参照:http://www.moj.go.jp/content/001138245.pdf
*6 投資法第6条参照:http://www.moj.go.jp/content/001138245.pdf
*7 投資法第7条及び別表第4参照:http://www.moj.go.jp/content/001138245.pdf
*8 住宅法政令第99号(Decree 99/2015/ND-CP)(政令の公式日本語訳は現状ない)

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