ドローンをめぐる法規制の最新動向 ~空撮とその映像利用に伴う法的リスク②~

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ドローンを利用した空撮サービスは日々増えており、テレビ番組、各種イベント、CM制作、ウェディングフォトから、施設の点検、調査に至るまで、徐々に私たちの日常生活にも浸透してきました(参考:そもそもドローンとは?)。

前回の記事では、ドローンを利用した空撮とその映像公開に伴って生じるプライバシー侵害、肖像権侵害などの法的リスクについて綴りました。今回は、いかにこういった法的リスクを回避しつつ、事業者がドローンを有効活用するかについてご紹介します。

helene haverd

出典:Helene Havard, “Tahiti Drone Photograhy”

 

 プライバシー侵害・肖像権侵害のリスクを回避するには?

前回の記事でもご紹介したとおり、空撮によって写り込んだ人やモノの所有者に対するプライバシー侵害・肖像権侵害の成否は、最終的には、撮影・公開の目的・必要性や、映像の内容や写り方などを考慮したケースバイケースの判断になります。もっとも、撮影者や映像公開者が、撮影時や映像公開時に一定の配慮をするだけでも、プライバシー侵害・肖像権侵害(そして、そのクレーム)のリスクを大幅に抑えることができます。ここでは、2015年9月に総務省が発表したガイドラインの内容などを含めた、有用な対応策をいくつかご紹介します。

 

1.撮影時の対応策

(1)住宅地にカメラを向けないようにするなど撮影態様への配慮(*1)

  • 住宅近辺における撮影を行う場合には、カメラの角度を住宅に向けない、又はズ ーム機能を住宅に向けて使用しないなどの配慮をすることにより、写り込みが生じ ないような措置をとる。
  • 特に、高層マンション等の場合は、カメラの角度を水平にすることによって住居内の全貌が撮影できることとなることから、高層マンション等に水平にカメラを向 けないようにする。
  • ライブストリーミングによるリアルタイム動画配信サービスを利用した場合、撮影映像等にぼかしを入れるなどの配慮が困難であるため、住宅地周辺を撮影するときには、同サービスを利用して、撮影映像等を配信しない。

 

(2)公共の場であっても、意図的に特定の個人に焦点を当ててその容貌を大写しにすることや、ラブホテル街など、その出入りを他人に知られたくないであろう場所付近での撮影は避ける。

 

(3)事前の情報提供

  • ドローンを利用して公道から撮影した道路周辺の画像を編集し、インターネット上で閲覧可能とな るよう公開する、いわゆる道路周辺映像サービス(Googleのストリートビューなど)その他類似のサービスを行う場合には、撮影前や公開前に、サービスに関して地域住民や地方自治体等の関係者に必要に応じて情報提供しておく(*2)

 

2.映像公開時の対応策

  • 人の顔やナンバープレート、表札、住居の外観、住居内の住人の様子、洗濯物その他生活状況を推測できるような私物など、プライバシー、肖像権侵害の可能性がある映像の解像度を落とす、ぼかしやモザイクなどの画像処理を行うなどして、それが誰であるか判別できないようにする。または、その部分の映像を削除する(*1)。
  • 人が公共の場所にいる場合は、 プライバシーの利益はきわめて制約されたものになるものの、公道での写り込みであっても、風俗店等に出入りする姿、立ち小便をしている姿、職務質問を受ける姿など、撮影、公開されることを通常許容しないと考えられる写真については、権利侵害となる可能性が高いので、同様の配慮をする。

 

この点、報道や特定の人物に対する批評など、その人の写真を掲載する必要もしくは有用である場合などがあるように、ぼかしを入れるべき程度についても最終的にはケースに応じて判断するべきといえます。

映像にぼかしを入れた方が無難な場合であっても、現実問題として、人の顔については、「顔認識」の技術である程度自動的にぼかしを入れることができればよいですが、ナンバープレートや表札、洗濯物などに手作業でどこまでぼかしを入れるかは、状況に応じて判断することになろうかと思います。

 

3 社内の体制整備

  • 映像公開後に、その映像に写り込んだ人から申出があった場合に画像にぼか し処理や削除等何らかの対応ができるようにしておく。
  • インターネット上で削除依頼を受け付けるだけではなく、 サービスの提供範囲等の事情も勘案しつつ、必要に応じて専任の担当者や専用の受付電話を設置するといった利用者に配慮した丁寧な対応を講じる。
  • サービスの 内容(仕様の改訂等も含め)、削除依頼の連絡先、プライバシー等への配慮措置の内 容、削除要請への対応実績等サービスに関連する情報を、インターネットを利用し ない一般市民の存在も視野に入れた上で、広く一般に周知するよう努める(*2)。

 

4 保険の加入

最近では、「ドローン保険」なるものが販売され、過失によるプライバシーなどの権利侵害から生じた損害賠償額や訴訟費用などを保険でカバーすることが可能となりました(信用の失墜までは回復できませんが)。

drone

 

 撮影映像等をインターネット上で公開するサービスを提供する電気通信事業者に特有の留意点

ドローンを利用した撮影映像をネット上で公開するサービスを提供する電気通信事業者(例えば、情報サービス事業者や、電子掲示板の運営者など)に関しては、「削除依頼への対応を適切に行うこと」という特有の留意点があります。

つまり、こういったサービスの運営者は、

  • 映像に写り込んだ人からは、プライバシー侵害や肖像権侵害などを理由に映像の削除の申出を受け、それを放置するとその申請者からクレームや損害賠償を受けるリスクと、
  • 逆に、それを不用意に削除すると、今度は映像の発信者からクレームや損害賠償を受けるリスク

に挟まれているというジレンマがあります。

そこで電気通信事業者が負うべき責任の範囲を限定し、明確にしたのがプロバイダ責任制限法(*3)です。同法の内容を踏まえて、電気通信関連業界が策定する「名誉毀損・プライバシー関係 ガイドライン」が、写真・肖像等の削除要請を受けた電気通信事業者が採りうる対応の指針として、以下の内容を公表しています(*4)。

  • 一般私人から、被撮影者が識別可能な撮影映像等についての削除の申出があっ た場合には、その内容、掲載の状況から見て、本人の同意を得て撮影されたものではないことが明白なものについては、原則として送信防止措置(=写真・肖像等の削除)を行っても、発信者に対する損害賠償責任は生じない。
  • もっとも、次のア)、イ)の場合など、送信防止措置を講じず放置することが 直ちに、申請者に対するプライバシーや肖像権の侵害には該当しないと考えられる場合もあり得る。

ア)行楽地等の雰囲気を表現するために、群像として撮影された写真の一部に 写っているにすぎず、特定の本人を大写しにしたものでないこと。

 イ)犯罪報道における被疑者の写真など、実名及び顔写真を掲載することが公共の利害に関し、公益を図る目的で掲載されていること。

  • 撮影それ自体について同意が得られていると思われる写真であっても、客観的に見て、通常の羞恥心を有する個人が公表されることに不快感又は精神的苦痛を感じると思われる写真(入院・治療中の姿等)については、削除できる場合が多い。
  • 明らかに未成年の子どもと認められる顔写真については、合理的に親権者が同 意するものと判断できる場合を除き、原則として削除することができる。

 

加えて、サービス運営者側としては、法律上の免責が受けられるか必ずしもクリアではない場合にも、サービス運営者の判断で、削除、送信防止措置の対応が可能となるよう利用規約の条項を工夫することが大切です。

 

***

 

ドローン利用の急拡大に伴い、日本政府も、ドローンが私たちの生活をより有意義にすることを認識しつつ、「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」(*5)を発足させるなどして、ドローン利用に関するルール作りに取り汲んでいます。ここでご紹介した空撮とその映像利用の問題に関しても、おそらく今後2~3年で、新たなルールやガイドラインができ、また、既存の法解釈に関する新たな判例なども形成されてくるかと思います。

今後の動向に要注目です。

 

 

*1 総務省「『ドローン』による撮影映像等のインターネット上での取扱いにかかるガイドライン」より

*2 「利用者視点を踏まえたICTサービス に係る諸問題に関する研究会 第一次提言」より

*3 法令の正式名称は、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律

*4 「名誉毀損・プライバシー関係 ガイドライン」は、あくまで、民間団体が公表している法解釈のガイドラインにすぎず、それ自体に法的拘束力はないことにご注意下さい。電気通信事業者が何らかの責任を負うか否かは、情報の内容、 情報が掲載された場所の特性、情報に対する発信者、申立者又は電気通信事業者の対応の仕方などによって異なります。

*5 「小型無人機に関する関係府省庁連絡会議」参照